d_753946 妙子と弘 4 朝の芯仕事──擦って、練って、通す

朝の台所。

火を入れる前の、静かな時間。

割烹着の袖をまくり、妙子はすり鉢の前に座る。

その手つきは、長年の積み重ねを感じさせるものだった。

乾いたごまが、音を立てて潰れていく。

やがて湿り、絡み、ねっとりと変わっていく。

その変化を、弘はすぐ後ろで見つめている。

距離は近い。

だが、まだ触れてはいない。

しかし――
手を添えた瞬間、
その関係は、ゆっくりと崩れ始める。

すりこ木が円を描くたび、
ごまは形を変え、
空気は少しずつ熱を帯びていく。

練る。

擦る。

絡む。

単純な作業のはずなのに、
そこには確かな‘変化’がある。

乾いていたものが、湿りを帯び、
やがて一つにまとまっていくように――
二人の距離もまた、
静かに、しかし確実に縮まっていく。

そして自然薯。

太く、粘りのあるその素材は、
さらに深く、強い手応えを求めてくる。

逃げずに向き合い、
芯まで擦り、練り上げる。

その過程のすべてが、
この一作に収められている。

本作は、
日常の中にある‘手仕事’を通して、
二人の関係が変わっていく過程を描いたシリーズ第4作。

急激ではない。

だが、確実に進んでいく。

触れる前の距離。

触れてしまったあとの空気。

そのすべてを、静かに味わってほしい。

――朝の芯仕事は、
思っているよりも深く、残る。
もっど見せる

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